釣りが好きな人は多い。以前住んでいた町は釣りが盛んで、サラリーマンなのに自分の船を持っている人もいた（燃料費がかかるから人を誘って何人かで出し合っていた）今の職場の部下でも、自分の釣竿を持っていて釣りに行く者がいて、楽しんでいるようだ。
俺はあんまり釣りの経験が無い。子供の頃に連れていってもらった思い出がある。でも、大人になって積極的に釣りに出かけるかというと、全然そんな気にはならない。好きではないんだ。俺には、釣りの面白さがわからなかったんだ。だって、魚がかかるまでめちゃくちゃ時間がかかる時だって多いだろうし、何もせずに待ってるだけでしょう。とても時間の無駄だと、ずっと思っていた。そう、釣りが好きじゃない、面白くなさそう、と思っていたのは、釣り自体じゃなくて時間の無駄が嫌だったんだ。今で言えばタイムパフォーマンスの悪さを嫌ったんだ。
でも今は、面白さはともかく、無駄な時間の大切さがわかる気がする。
タイムパフォーマンスを追求するのは流行りのようだ。俺は割と昔からそういう傾向があって、とにかく短い時間にあれこれと詰め込もうとする性格だ。こういう人はたぶん心が細くなってるんじゃないかな。
時間をたっぷりと無駄に使う事は、マインドフルネスだと思う。心が分厚くなるような気がするよ。そりゃあそうだよ、考える事が少ないんだもの。
俺はいつもいつも、バイクに乗れば道中はすっ飛ばして早く目的地に着きたいし、ゲームをすれば早くクリアしたい早く次にいきたいと、動作そのものにフォーカスして楽しむ気持ちが少ない奴なんだ。だから料理自体も楽しくない、早く結果（喫食）が欲しいから。似た感じで、植物の栽培も苦手だ。
いつも何かに追われているような気がしてるんだ。早く終わらせないとって。だからじっくりと楽しむ事ができない。動作そのものではなくて結果ばかりを見過ぎている、結果ばかりを愛してしまっているんだ。
ここ最近は初めてそういう自分を冷静に観察できた。何が俺をそんなにせき立てているのか自分でもわからないが、自分を理解できたら、少し前に進めるような気がする。ひょっとして結果が無くても無駄な時間を過ごせる事は、それ自体が幸福なんじゃないかって思ってるんだ。
少し気持ちを切り替えないといけないね。バイクは強制的に時間をかけざるを得ないからまあいいが。釣りに行く気はまだしないんだ。キャンプとかもゆっくり過ごせていいかもしれない。なんだかむずむずする。
